水上葉ケースの腰水は「交換」が要る|無施肥なのに硝酸塩が250mg/Lまで溜まっていた実測

育成ガイド

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水上葉ケースの腰水(こしみず・底に張った水)、減った分を足すだけで、交換はしていない——そんな管理をしていませんか。私はその方法を33日間続けた結果、ブセファランドラを2株失いました。原因を測ってみると、肥料を一切与えていないのに硝酸塩が250mg/Lまで溜まっていました。この記事では、そのときの実測値と、なぜ無施肥で塩類が溜まるのか、どう管理を変えたのかをまとめます。

結論を先に:交換しない腰水は、33日で原水の8倍になりました

先に数字を出します。すべて当ファームの実測値です。

測定対象 TDS 原水(53ppm)との比
浄水器の水(原水) 53 ppm 1.00倍
問題のケースの腰水 432 ppm 8.15倍
同じソイルでも腰水を交換していた別ケース 68 ppm 1.28倍
赤玉土へ移設した直後 55 ppm 1.04倍

TDS(総溶解固形物量・水に溶けているものの総量)が原水の8倍。しかも肥料は一度も与えていません。

さらに中身を測ると、硝酸塩(NO3)が250mg/Lありました。水草育成で目標にする濃度の10倍以上です。

📌 公開後に、他の5ケースもすべて測定しました。 その結果、同じ栄養系ソイルでも3ヶ月無交換で無事に育っているケースがあることが分かり、原因の見立てが変わりました。記事末尾の追記をあわせてご覧ください。

以下、何が起きたのかを順に説明します。

何が起きたか:8株のうち2株が根茎まで溶けました

2026年7月25日、ブセファランドラ クダガン レッド8株を植え付けました。組織培養(TC)株から株分けしたもので、底床は栄養系ソイル(アマゾニアVer2)です。増やす目的で、底床全体に広げる「面植え」にしました。密閉して高湿度を保つ、いつもの水上葉育成の設え。腰水は20mm。管理は「減ったら浄水器の水を足す」だけでした。

33日後の8月27日、株はこうなっていました。

栄養系ソイルの上でまばらになったブセファランドラ。葉数が少なく、白い根が底床に潜らず表面を這っている
栄養系ソイルの上でまばらになったブセファランドラ。葉数が少なく、白い根が底床に潜らず表面を這っている

2026年8月27日撮影。植え付けから33日後の全景です。葉が減り、株がまばらになっています。

写真で気になったのは、白い根が底床に潜らず、表面を這っていることでした。根が底床の中に入っていきたがらない。この時点で「底床の中に何かある」と考えるべきでした。

そして株元まで進行した個体がこちらです。

根茎が褐色に変色し、展開している葉がほとんどない株。周囲には白く透明化した葉の残骸が散らばっている
根茎が褐色に変色し、展開している葉がほとんどない株。周囲には白く透明化した葉の残骸が散らばっている

根茎(こんけい・成長点を含む茎)が褐色に変色しています。周囲に散らばる白っぽい破片は、溶けきった葉の残骸です。

8株のうち2株は根茎まで溶けて回収できませんでした。残る6株も葉数を大きく落としていました。

腰水を測ったら、原水の8倍でした

株を取り出す前に、腰水のTDSを測りました。432 ppm。浄水器の水(53 ppm)の8.15倍です。

比較のために、当ファームの他のケースの数値も並べます。

ケース 底床 腰水の管理 TDS
浄水器の水(原水) — — 53 ppm
今回のケース 栄養系ソイル 33日間、補水のみ 432 ppm
底床比較の実験 同じ栄養系ソイル 途中で全量交換あり 68 ppm
同上 赤玉土 同上 39 ppm

同じ栄養系ソイルを使っていても、腰水を交換していたケースは68 ppmで収まっていました。 そして溶けも出ていません。

ちなみに赤玉土のケースは39 ppmで、原水(53)より低い。赤玉土がイオンを吸着するためと考えられます。底床による違いはアヌビアス スノーフレークの白斑実験でも比較を続けています。

中身は何だったのか:硝酸塩が250mg/L

TDSは「何かが432ppm溶けている」ことしか教えてくれません。何が溶けているかは分からないのがTDSの限界です。そこで試薬で窒素の3形態を測りました。使ったのはセラ (sera) NO3テスト(3×15ml・約60回分)などの液体試薬です。

項目 結果
アンモニア(NH3/NH4) 0(検出限界以下)
亜硝酸(NO2) 0(検出限界以下)
硝酸(NO3) 250 mg/L

硝酸だけは一度で読めませんでした。試薬のカラーチャートは上限が100mg/Lで、そこを振り切ってしまったのです。そこで浄水器の水で10倍に薄めて測り直しました。

左は腰水そのままの試験管で、色見本のいちばん濃い段階と見分けがつかない濃い赤紫。右は10倍希釈した試験管で、25mg/Lの色見本とほぼ同じオレンジ寄りの赤
左は腰水そのままの試験管で、色見本のいちばん濃い段階と見分けがつかない濃い赤紫。右は10倍希釈した試験管で、25mg/Lの色見本とほぼ同じオレンジ寄りの赤

カラーチャートの上に試験管を置いて比較しました。左が腰水そのまま、右が10倍希釈です。左は最も濃い段階(100mg/L以上)と並べても区別がつかず、振り切れていることが分かります。右は25mg/Lの見本とほぼ一致しました。

25 mg/L × 10倍 = 250 mg/L。 これが確定値です。

希釈するときは倍率の計量を正確に行ってください。以前、液肥の希釈で倍率を取り違え、推定値が10倍ずれたことがありました。今回はシリンジで測り、希釈後の値(25)が別に測ったTDSの計算とも整合したため、操作が正しかったことを確認できています(計算は後述します)。

「ソイルのアンモニアで溶けた」ではありませんでした

私は当初、栄養系ソイルから出るアンモニアを疑っていました。しかしアンモニアも亜硝酸も検出限界以下でした。

これが意味するのは、硝化(しょうか・アンモニアが微生物によって亜硝酸→硝酸へ変換される働き)が正常に完了していたということです。窒素はすべて最終形態の硝酸として存在していました。

つまり系は壊れていませんでした。微生物はきちんと働いていた。正しく働いた結果として、硝酸塩が溜まり続けたわけです。ここが今回いちばん腑に落ちた点でした。設置から33日、初期のアンモニアはとうに硝化されていたのです。

TDS 432の正体は、ほぼ全部が硝酸塩でした

濁りを除いた状態で測り直したTDSは343 ppmでした。この数字が硝酸塩で説明できるか計算してみます。

“` 硝酸イオン 250 mg/L ÷ 62 = 4.03 mmol/L 電気的なつり合いのため、同じ電荷量の陽イオンが必ず一緒に存在する カリウムなら 158 mg/L → 硝酸塩の合計 408 ppm カルシウムなら 81 mg/L → 硝酸塩の合計 331 ppm マグネシウムなら 49 mg/L → 硝酸塩の合計 299 ppm “`

実測のTDS 343は、この299〜408の範囲にすっぽり収まります。溶けていたものは、ほぼ全部が硝酸塩とその相方のイオンだったということになります。

なお、陽イオンの内訳(カリウムなのかカルシウムなのか)までは測っていません。合計として計算が合う、というところまでの話です。

250mg/Lがどのくらいの濃度か

基準 硝酸イオン濃度 今回との比
今回のケース 250 mg/L —
水草育成で目標にしている範囲 10〜25 mg/L 10〜25倍
日本の水道水質基準(硝酸態窒素10mg/L相当) 約44 mg/L 5.7倍
一般的に言われる淡水魚水槽の上限 50 mg/L 以下 5倍

窒素に換算すると56.5 mg/L。水道水として飲めない水準の5.7倍です。

ブセファランドラは、ボルネオの貧栄養な渓流で岩に張り付いて育つ植物です(詳しくはレオフィタ適応の記事で解説しています)。その根が置かれていた環境は、自生地とはまったく別物でした。

なぜ無施肥で溜まるのか:出口のない系だから

肥料を与えていないのに、なぜ硝酸塩が250mg/Lまで上がるのか。理由は単純で、入ってくる経路はあるのに、出ていく経路がないからです。

入ってくる側

  • 栄養系ソイルに含まれる肥料分が、少しずつ溶け出す
  • 枯れ葉や有機物が分解され、アンモニア→亜硝酸→硝酸と変換される

出ていかない側

  • 腰水を交換しないので、溶けたものは系の中に残り続ける
  • 補水は水位を戻すだけで、溶質は出ていかない。むしろ蒸発した分だけ濃くなる
  • 生体(魚・エビ)がいないので、硝酸塩を持ち出す存在がいない
  • 水草の吸収が供給に追いつかない

つまり「足す」管理を続ける限り、濃度は上がる一方です。これは水槽の水換えと同じ理屈で、頭では分かっていたはずなのに、腰水という小さな水量では意識から抜けていました。

栄養系ソイルそのものが悪いわけではありません。同じソイルでも交換していたケースは68 ppmで、溶けは出ていないのですから。犯人は「栄養系ソイル」ではなく、「栄養系ソイル × 交換しない止水」という組み合わせでした。

対処:赤玉土へ移して、原水+2ppmまで戻りました

残った6株を掘り上げ、傷んだ部分を切除して、赤玉土のカップ3個へ2株ずつ移しました。根茎は埋めず、赤玉土の表面に置いています。

赤玉土のカップに植え直したブセファランドラ。濃い緑の葉が10枚以上残り、照りを保っている
赤玉土のカップに植え直したブセファランドラ。濃い緑の葉が10枚以上残り、照りを保っている

2026年8月27日撮影。もっとも状態の良かったカップです。葉の照りは保たれています。

翌日、3カップの腰水を測りました。

カップ TDS 原水との差
1 55 ppm +2
2 56 ppm +3
3 55 ppm +2

原水の8.15倍から1.04倍へ、1日で戻せました。 根が置かれる環境という意味では、これでリセットできたことになります。

株が本当に回復するかどうかは、これから数週間の観察待ちです。根茎まで溶けた2株は戻ってきません。移設が間に合ったのかどうかは、まだ分かりません。

【2026年8月29日 追記】6ケース測って、見立てが変わりました

この記事を公開した日、残りのケースもすべて測定しました。 結果は予想と違い、原因の理解が一段深まりました。

6ケースの実測値

ケース 収容している株 底床 経過 TDS 状態
A アヌビアス(成株) 栄養系ソイル 93日 283 繁茂・良好
B アヌビアス(成株) 栄養系ソイル 94日 402 良好
C ブセファランドラ(成株) 栄養系ソイル 94日 461 良好
D ブセファランドラ(成株) 栄養系ソイル 94日 402 良好(1株に下葉の黄変)
E ブセファランドラ(組織培養の小株) 栄養系ソイル 33日 432 2株が根茎まで溶けた
F 各種(6カップ) 赤玉土 35〜40日 32〜36 良好

Cは461 ppm——今回溶けたEの432より高いのに、葉を大きく広げて健全でした。

濃度そのものが犯人ではありませんでした

整理するとこうなります。

赤玉土 栄養系ソイル
成株 (データなし) 283〜461 ppm・すべて無事
組織培養から出したばかりの株 32〜36 ppm・無事 432 ppm・壊滅

同じ日に同じカップから株分けした株が、赤玉土では無事に育ち、栄養系ソイルでは半分以上を失いました。品種も由来も管理も同じで、違うのは底床だけです。

一方で、成株は461 ppmでも平気でした。

つまり危険なのは高濃度そのものではなく、「高濃度 × 弱い株」という組み合わせです。組織培養から出したばかりの株は根も葉も未発達で、浸透圧のストレスに耐える力がまだありません。

弱い株は、濃度が上がるのも速い

もうひとつ気づいたことがあります。溜まる速さが違いました。

  • 成株のケース:約94日で402〜461 ppm
  • 溶けたケース:33日で432 ppm ← 約3倍速い

理由は株の吸収量だと考えています。成株は葉数が多く、硝酸塩を吸って濃度の上昇を抑えている。 小株はほとんど吸わないので、溶け出した分がそのまま溜まっていく。

弱い株ほど濃度が速く上がり、しかも高濃度に弱い。 二重の不利を負っていたことになります。

赤玉土は、そもそも溜まりませんでした

赤玉土の6カップは35〜40日たっても原水(53 ppm)を17〜21 ppm下回っていました。塩類が溜まるどころか、吸着で減っています。

赤玉土のケースは腰水の交換が要りません。 補水だけで問題ないことが、6カップすべてで確認できました。


この経験から決めた管理ルール(追記の実測を反映)

同じ失敗を繰り返さないよう、日々の管理手順を書き換えました。公開時は「週1回の全量交換」としていましたが、実測に合わせて改めています。

ルール 内容
交換の要否は底床で決まる 赤玉土は交換不要(35〜40日で原水以下)。栄養系ソイルは溜まる(3ヶ月で原水の5〜9倍)ので対応が要ります
一律の週1交換はやめました 「必ず週1で換える」ではなく 「測って、超えていたら換える」。実測に基づかない頻度は労力の無駄になります
TDSを測って記録する 安定した成株のケースは月1回、組織培養株など不安定な株のケースは2週に1回。数字が上がる速さは株の状態で変わります
弱い株に栄養系ソイルを使わない ここが最重要でした。組織培養から出したばかりの株、株分け直後の株には低栄養の底床を使います
既存の高濃度ケースに弱い株を追加しない 成株が耐えている400 ppm級のケースでも、そこへ弱い株を入れれば同じ事故になります
水位は底床の表面より下 根茎を水没させない。過湿は別のリスクになります
根茎は埋めない 表面に置き、根だけを底床に触れさせます

TDSが便利なのは、濃くなってきたことが数字で見える点です。逆に言えばTDSだけでは何が溶けているか分かりませんから、気になったときは試薬で中身を確認する。この2段構えが現実的だと感じています。

なお赤玉土はイオンを吸着しますが、吸着できる量には限りがあります。40日の時点では余裕がありましたが、永久に続くとは考えないほうが安全です。

この記事の限界

正直に書いておきます。

  • 相関であって、因果を証明したわけではありません。 硝酸塩が高かったことと株が溶けたことは同時に観測されましたが、浸透圧が組織に与えた影響を直接測ったわけではありません
  • 温度の影響を切り分けていません。 この夏はケース内で28.4℃を記録した日がありました
  • 「弱い株」を定義できていません。 組織培養から出したばかりという以外に、根の量や葉数といった指標で測ったわけではありません
  • 陽イオンの内訳は未測定です。 硝酸塩の相方がカリウムなのかカルシウムなのかは分かっていません
  • 1つのラックの6ケースです。 同じ条件を別の環境で再現したわけではありません

ただ、同じ日に同じカップから株分けした株を、底床だけ変えて比較できたのは幸運でした。全滅を避けるために分散させておいた構成が、そのまま対照実験になっていました。

溶けの原因を切り分ける全体像は「ブセファランドラが溶けた」原因を切り分けるにまとめていますので、症状から当たりを付けたい方はそちらもご覧ください。

まとめ

  • ✔ 無施肥でも塩類は溜まります。 栄養系ソイルの腰水は、補水だけの管理で3ヶ月に原水の5〜9倍に達していました。溶けたケースは33日で8.15倍・硝酸塩250mg/L
  • ✔ 溜まっていたのはアンモニアではなく硝酸塩でした。 硝化は正常に働いており、正しく働いた結果として最終形態が蓄積していました
  • ✔ 危険なのは「高濃度 × 弱い株」の組み合わせです。 成株は461 ppmでも平気でしたが、組織培養から出したばかりの株は432 ppmで半分以上を失いました
  • ✔ 底床で決まります。 赤玉土は35〜40日たっても原水以下で、交換が要りませんでした

腰水は水量が少ないぶん、水換えという発想から抜け落ちがちです。ただ「とにかく頻繁に換える」より、まず測ること。数字を見れば、換えるべきケースとそうでないケースがはっきり分かれます。

私は最初、この記事で「週1回の全量交換」と書きました。実測してみたら、そこまでの手間は要らないケースと、交換では追いつかないケースがあったというのが正直なところです。

窒素の”かたち”が水草にどう効くかについてはブセファランドラに「強い肥料」はいらないで、密閉ケースの環境そのものについては密閉ケースの温度は何℃上がるのかで扱っています。


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